ヴァーティゴ 2005//ライヴ・フロム・シカゴ [DVD]
価格: ¥6,500
コフィ・アナン(国連事務総長)やジョージ・W・ブッシュ(アメリカ大統領)のような人たちと付き合っていないとき、活動家のボノは「U2」と好んで呼ぶ副業を行っている。「ヴァーティゴ・ライヴ・フロム・シカゴ」は、アルバム「ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム」の「U2」ツアーのうち2夜をとらえたものである。ハイテクを駆使したツアー・ライヴで知られたバンドだが、ダブリン出身のメンバーは年長の政治家を感動させるという居心地のよい役割に落ち着くことになった。屋根の垂木から巨大なレモンを垂らすよりも、相当な数のレパートリーの中にある聖歌や悲しい歌を強調することにしたのである。常に時代精神を反映しているバンドだが、このコンサートフィルムでは彼らはベストをつくしており、比較的余分なものを取り除いた舞台装置とすばらしい録音が楽しめる。「U2」のロック魂あふれる歌を「聖歌」と呼ぶのは控えめな表現かもしれないが、彼らの聖歌はシカゴのユナイテッド・センターで実にいきいきと鳴り響いた。ボノが以前より重い表情で疲れているように見えるのは当然で、おそらく肩に背負っている世界の重さのせいだろう。アイコンであるボノがメタリカのような「ヘビ穴」の周りの円形の舞台をうろついている間、ギタリストのジ・エッジ、ドラマーのラリー・ミューレン・Jr、ベーシストのアダム・クレイトンが歌を床板に釘付けにし、昇天させる。なぜ彼らはいっしょに夢見るような演奏ができないのか? 秀逸なのは「ビューティフル・デイ」「ニュー・イヤーズ・デイ」「プライド(イン・ザ・ネーム・オブ・ラブ)」「サンデー・ブラディ・サンデー」といった新旧のヒット曲だ。コンサートの後半、ボノは世界のリーダーに貧困を終わらせるように訴え、人類を月に送った国に創意を訴えた。彼は巧妙に観客に携帯電話を取り出させ、世界の飢餓を終わらせる嘆願書として携帯電話のテキストメッセージを使うように訴えた。会場は発光ダイオードのスクリーンで輝き、バンドはスムーズに「One」の演奏に入る。どこに行ってもボノは宗教を思いおこさせ、イスラム教、ユダヤ教、キリスト教のシンボルを描いたヘッドバンドをして、1975年の白髪の核兵器反対運動家のようである(「ザ・フライ」に似た新しいキャラクターなのか)。冗談は抜きにして、このツアーの日々、ヴィレッジ・ピープルのような衣装を着て、時にはKマートで演奏している「U2」を観る場合、90年代よりもずっと自分の気を引き締めて、「U2」に対する愛情を持って観る必要があるだろう。世界を救いたくない人には向かない作品である。(Ryan Boudinot, Amazon.com)