2000年のトニー賞でベスト・ミュージカル賞に選ばれたスーザン・ストローマンのコンタクトは大議論を巻き起こした。このダンス・プレイで使われた音楽はすべて事前録音されたもので、選曲もほとんどが既存の曲からだったため、これまでの“ミュージカル”の範疇(はんちゅう)に入れていいものかどうか悩ましかったからだ。では、この『コンタクト:ミュージック・フロム・ブロードウェイ・ショー』のCDには一体何が入っているのか。3部構成の第1部はフランスの田舎が舞台になっていてステファン・グラッペリの“My Heart Stood Still”がメインの曲として使われている。第2部はロマンティックなファンタジーで、レオナルド・バーンスタイン指揮によるグリーク、チャイコフスキー、ビゼーなどの名曲が流れる。そして現代ニューヨークを舞台にしスイング・ダンスたっぷりの第3部では、クラシック・ポップ(ディオン、ビーチボーイズ)、ネオ・スイング・バンド(スクゥイール・ナット・ジッパーズ、ロイヤル・クラウン・レヴュー)の曲、そしてコンタクトを代表する曲となったロバート・パーマーの“Simply Irresistible”が使われている。
トニー賞4部門に輝く作品だがCDなので、ストローマンの振り付け、カレン・ジエンバとボイド・ゲインズのダンス/演技(もちろんデボラ・イエーツの強烈な黄色いドレスの女役も)などで受賞した3部門の功績を実感できないのは非常に残念だ。しかし今回はラッキーなことに、通常はディーン・マーティンが歌う“You’re Nobody Till Somebody Loves you”をゲインズが柔らかな物腰で歌う新ヴァージョンの方で収録している。ピーター・シャファーのアマデウスのCDと比べれば、この『コンタクト:ミュージック・フロム・ブロードウェイ・ショー』のCDは革新的で活気あふれる演劇体験を再体験するには文句なしの1枚と言えるが、音楽的な観点から言えば良いも悪いもごった混ぜの寄せ集めという感は否めない。(David Horiuchi, Amazon.com)