悪くはないが、良くもない
★★★☆☆
絵は「上手!」とは思いませんが、下手ではありませんし、個人の趣味ではむしろ好きな部類に入ります。
シナリオも無理なく成立しています。
それでも評価を★★★としたのは、作中で主人公達が作るゲームソフトの描写がイマイチだったからです。
本作品は、非常に大雑把にまとめると、ゲームクリエイターの主人公が、過去のトラウマを抱えつつ自分が面白いと思う作品を作るため、様々な困難を乗り越えていく、という感じになると思います。
それゆえ、主人公達よりも「ゲームソフト」が主役であるべきだと思います。
それにも関わらず、主人公達がつくる「ゲームソフト」の内容描写はお粗末に過ぎます。
ゲームソフトを「作る過程で悩み、成長する主人公」を描きたいのであればそれも結構ですが、「何かをつくる人達」を主人公にした漫画は最近よくあります。
そうであるからこそ、「主人公達がつくっている作品」の描写にもっと力をいれて書いてほしい作品です。
最近の例で言えば、「漫画」をつくるバクマンはその点がしっかりしていると思います。
同作品に登場する漫画は、実際にあったら面白いのか?という疑問は措くとして、ジャンルやテーマ、キャラクター等の設定がしっかりしていますし、具体的なシナリオが作中で語られることもあります。
それゆえ、そこに行き着くまでの主人公達の苦労や成長に意味があると感じられます。
本作品でも、極端にいえば、1話全てを通して主人公達が登場せず、ただプレイor製作しているゲームの内容の描写という話があって、しかもその描写されているゲームの内容が1話通して語るに足りるものであれば、本作品も非常にすばらしいものになると思います。
モノを創るのは熱いし楽しい
★★★★☆
表現の自由が保障されていながら、様々な規制が掛かる、
もしくは掛けられようとしている昨今、多様なクリエイターに
課せられる制限も厳しくなり、中にはその為に思う所とは
異なる形で外に出さざるを得ないという話も耳にする。
そんな小難しい話を描いているワケでは無いが、
何かしらモノを創る人、特にゲーム制作に携わる人には
読んでもらえたら、何かしら思いが残るマンガだと思える。
主人公たる小規模ゲーム制作会社プロデューサー天川太陽の
言動は子供じみた理想論とも取れる内容で、振り回される
周りは堪ったものでは無いと思えるが、クリエイターを
名乗る者にとっては忘れてはならない根底とも言えると思う。
現実にはこんな都合良く行かない、単なる夢想だという声も
聞かれるだろう事は明白だが、ここに表現されている意志は
心揺さぶられるものが有ると思う。
夢を売る側が夢を忘れていてはロクなモノが出来るはずが無い。
妥協も必要という言葉に託けて、情熱を捨てた抜け殻で何を
表現すると言うのか。そんな気持ちを思い出させるような
マンガだと思える。
などという拙いレビューに少しばかり興味が持てましたら、
東京トイボックス 1 (モーニングKC)または、
東京トイボックス 1 新装版 (バーズコミックス)から追いかけてみてほしい。
大東京トイボックス 1 (バーズコミックス)からでも良いですが、
やはり初っ端の崩れっぷりが有ってこその、この話だと思う。
個人的には、結構熱くなれましたぜ?w