閉ざされた世界に希望はないのか?
★★★★★
混沌とした展開になってきました…。「やる瀬ない」の一言です。
今巻は、今まで以上に「底辺」に生きる人々の悲哀が痛いほど伝わってきて泣けました。
どんなに努力しても変わる事のない階級。同じ人間なのに「下層民」というだけで差別され人間扱いされない現実。
それでもミツたち下層階の人々は貧しいながらも助け合い、ささやかな幸せの中で懸命に生きている。
その姿を見て癒され、温かい気持ちになりました。ですが、今回込み上げてくるのは言い様のない感情ばかり…。
着々と進むニシマルさんの計画。不条理な世界を飛び出して「地上」に光を見出したいという強い想い―。
ミツが計画に乗る決心をしてしまいますが、私は心の中で「やめてー!」と叫んでしまいました…。
「負」の感情の塊のようなニシマルさんの存在が、物語に暗い影を落としています。
彼が心から下層民の幸せを願っているかは、今巻を読む限りでは分からない。それが、すごく不安です。
後半、下層に緊急事態が起こりますが、さながら映画の「タイタニック」のような状況に茫然としました…。
そして、ニシマルさんの狂気がとんでもない悲劇を引き起こします。「何故?!」と思わずにはいられない(涙)
ニシマルさんも不幸な人で同情すべき所はあるが、世の中不幸なのは彼だけではない。
善悪の境界を越えてしまった彼の行為に衝撃を受けました。どうか、みんな幸せになってほしいと願うばかり…。
今回の表紙は、タマチ君。灰色一色の外壁に命綱を持ってポツンと佇む姿が印象的です。
しかし、ミツや真たちに後押しされて、タマチ君もやっと前に進めそうな感じですね。それだけが救いです。