隠逸詩の世界を作った巨人・陶淵明
★★★★☆
かなり前のNHKラジオ番組で採り上げられた陶淵明の詩を、そのときのテキストをベースにまとめ直したもの。陶淵明の人生に沿って有名な作品が石川先生の名調子で解説される。
陶淵明は役人生活をやめて隠遁したのだが、心の底では仕官の望みを捨てきっておらず、一筋縄ではいかない人だ。しかし、田舎の生活の日々に感じる喜びを詠った詩は1500年たった今でも東洋人の心を捉えて離さない。私も隠遁したいという衝動に時として突き動かされるが、隠遁生活を高らかに肯定したのが陶淵明だ。特に「飲酒」の連作は素晴らしいの一言に尽きる。
NHKのテキストにあった主要語句の解説やカラー写真の頁がないのは残念だが、陶淵明の築いた詩の世界へ誘い、奥深い所へ導いてくれる良書だと思う。