情熱的なスウェード(アメリカでのバンド名は「ロンドン・スウェード」)の1992年から97年にかけてのシングル曲とそのカップリング曲をそろえたこのコンピレーションは、バンドの進化の過程を教えてくれる。スウェードの残した作品は、音楽誌NWE(「ニューミュージカル・エクスプレス」)の表紙を美しく飾る英国の人気者たちによる慌ただしいナンバーよりも長く聞きつづけられるはずだ。バンドのリーダーであるブレット・アンダーソンの完成されたヴォーカルは、お得意のソウルフルなファルセットからフォークシンガー的な誠実さまで幅広く歌い分け、事実上バンドの色を決定づけているが、曲作りも洗練の一言。
スウェードは、60年代英国のすばらしいポップサウンドに敬意を表する難解なテクニックを、あからまに用いずに巧みに使いこなしている。ギターはあざけることなくうなり、微妙な広がりを感じさせるギターのエフェクトはピンク・フロイド初期のスペース・ロック時代を彷彿(ほうふつ)とさせ、ジャンルの垣根をやすやすと崩している。本作は、彼らのキャリアを追ってきたファンにとっては究極のコンピレーションであり、初めて聴くリスナーも、ひとたび彼らの世界にどっぷりつかれば熱狂的なマニアに変わるはずだ。(Alan E. Rapp, Amazon.com)