「トレーシー・ウルマン・ショー」で放映開始されて即座にヒットした「ザ・シンプソンズ」と違い、ヒル一家の物語が人気を得るには少し時間がかかるかもしれない。ハンク・ヒル(声はマイク・ジャッジ)は、気さくな南部人というよりは、短気な労働者階級の南部白人だ。とはいえ、このセットに収録されているもっとも初期のシリーズでは、変わり続ける世界にあって、理性の声になろうと必死に努力する。代理教員を務めている妻ペギー(キャシー・ナジミー)はいやいやながら性教育を担当することになり(悩むペギーが突然「ヴァギナ」という言葉を言ったときのハンクの反応はダニー・トーマスにも匹敵する)、息子のボビー(パメラ・シーガル)は喜劇俳優になりたいと言い出し、近所に住むデール(ジョニー・ハードゥイック)はそこら中に政府の陰謀を発見する。しかしハンクはシットコムでは珍しいキャラクターだ。善意の人にしてよき父として、仕事(プロパンガスと周辺機器の販売)に取り組み、家族に尽くす。その家族には、ペギーのめいで、若く希望に満ちた美容師のルアンヌ(ブリッタニー・マーフィー)も含まれる。シリーズ初心者には、セットに入っている3枚のうち、このシーズンの中でもっともすぐれた3つのエピソードが収録された2枚目が入門には最適だろう。救いがたい女性差別主義者であるハンクの父親にペギーが挑む話(「ボビーはよく台所でお手伝いをしてくれる」とペギーが言うと、「お前がなんと言おうと」とハンクの父が応じる)は中でも傑作。このセットは、放映時には削除されたシーンやシリーズの制作者たちやキャラクターのコメントなどの付録も盛りだくさんだ。ホームビデオにいよいよ登場したヒル家の物語。さあバーベキューを始めよう。(Donald Liebenson, Amazon.com)