信じられないような話だが、これは、すでに古典となっているものと、これから古典となりそうなもの── 『Goodnight Moon』（邦題『おやすみなさいおつきさま』）から『Stellaluna』（邦題『ともだち、なんだもん!―コウモリのステラルーナの話』）まで── の実に44編もの読み聞かせ童話が詰め込まれた、とてもおしゃれなうえに、確実に歴史に残るアンソロジーである。

   全308ページの本書をパラパラとめくっていると、大切な友だちや家族の写真の詰まったアルバムを見ているような気分だ。おなじみの「おさるのジョージ」や牡牛のフェルディナンドが本のページからじっとこちらの様子をうかがっている。『Madeline』（邦題『げんきなマドレーヌ』）や『Millions of Cats』（邦題『100まんびきのねこ』）の場面が、きのう見た光景のように鮮やかに広がる。考えてもみてほしい。休暇で旅行に出かけるとき、この本さえもっていけば、何冊もの単行本でいっぱいのスーツケースを引きずらずに済むのだ！ 家に帰ってくる子どもたちを、ページの端が折られてぼろぼろになった、こんなお気に入りの1冊が待っているというのもちょっといい。

   知育本、文字のない本、絵本、読み聞かせ童話、そういったものの見事な集大成である本書の編集にあたったのは、長年にわたって児童書の編集、出版に携わってきたジャネット・シュールマンだ。各ストーリーは赤、青、緑の色別に対象年齢が示してあり、『Whose Mouse Are You?』など0～1歳児向け、『Where the Wild Things Are』（邦題『かいじゅうたちのいるところ』）など幼児向け、『Alexander and the Terrible, Horrible, No Good, Very Bad Day』など5歳以上向けがひと目でわかるようになっている。

   本書がバカでかくならなかったのは、各ストーリーの挿絵の多くがこのアンソロジーのフォーマットに合うように縮小されたり、省略されたりしているからだ。たとえばレオ・レオニの『Swimmy』（邦題『スイミー』）は、オリジナルは全29ページだが、本書では5ページに収まっている。62人の作者と画家ひとりひとりにも、とびきりユニークなミニ紹介文がささやかなスポットライトを当てている。お気に入りのストーリーがある読者には、索引がうれしい。おなかに星のついたスニーチや、ウィリアム・ステイグのロバや、センダックの怪獣がいつでもすぐ手の届くところにいるなんて、考えただけでハッピーになれるはずだ。もちろんあなたの家の本好きのおチビちゃんも、ハッピーになること請け合いである。