けれど、その勝利の根拠は、
ひたすら『努力・努力・努力して努力・・・・・・・・・・・・・・・・』。
あだち充さんのタッチやH2、水島さんの作品と比較して、才能がある人はだれ一人もいないし、かわいい女の子は出てこないし、マンガの世界で、これほど練習シーンばかりが描かれる作品というのも、過去もこれからもありえないだろう。
気味悪いような極限の努力。けれど、才能もなにもない谷口君が、それを淡々とする姿に、人がついていき、巨大な勝利が生まれ、そして感動を生む。
このマンガは、不思議な作品だ。今の商業文化にまみれたマンガではここまでの、すべてをそぎ落としたようなストイックな野球マンガはありえないだろう。昭和という時代背景に誕生した、野球マンガの大傑作だと思う。こういうのを見せられたら、アメリカ人とかには気が狂ったといわれそうな、リアリストな根性主義。。。
VISIONISTや野心家にありがちな自己アピールは、皆無。ひたすら、戦慄するようなストイックさと練習を積む主人公。作者のちばてつやさんという人のことは詳しく知らないが、そうとうの完璧主義者だったのだろうと思う。
僕は、この本を読むたびに、あきらめないで、前を向かなきゃいけないという、厳粛な気持ちに立ち返らされる。