こういった個人的な問題にもかかわらず、スカーペッタは相変わらず検死局の女神である。彼女はコンテナ船の中で発見された腐乱死体を調査するため、現地へと飛ぶよう指示される。「目はカエルのように張り出し、頭皮とあごひげは、その黒ずんだ外皮といっしょにはがれかかっている」。ケイはその男の服に、動物の毛にも似た奇妙な頭髪が付着しているのに気づく。この頭髪は、その数日後に殺された店の従業員の死体にも付着していた。こうした奇妙な殺人は、バージニアをはるかに越えて広がっていく…リッチモンドの殺人犯はフランスでも惨殺を繰り返したのだ。ケイとピート・マリーノ警部はパリへ飛ぶ。しかしパリの遺体保管所から最高機密の情報をかき集めながらも、自分たちが犠牲者にならないよう万全を期する必要があった。
この背筋の凍るような大著は、これまでのスカーペッタ物語9作をひとまとめにしたようなものである。身の毛のよだつ、それでいて惹きつけられる検死場面。ひねりの多い展開。これまでよりは少し繊細な感じがするが、それでも検屍官スカーペッタはやはり、読者を魅了する。