予備のカラシニコフ自動小銃か‘台所の化学’の知識があれば、あるいはたんに死ぬ覚悟さえあればだれでもプレイヤーになれる、テロリズムの「すばらしい新世界」では、古いルールはもはや通用しない。どんな新しい政府組織が出現しようとも、真に有効な組織と呼べるのは、機動性に優れ、監視や規制がなく、なおかつ体制の外にある組織だけだ。――体制のずっと外に。
メリーランド郊外のパッとしないオフィスビルの中にあるヘンドリー・アソシエーツ社は、有価証券や国際通貨で高収益をあげている。だが同社にはまったく別の真の使命がある――テロリストの脅威を察知し、必要とあらばどんな手を使ってでもそれを阻止すること。米国大統領ジョン・パトリック・ライアンの知識をもとに設立された「ザ・キャンパス」は、軍や政府関連機関の至るところに採用担当者をばらまき、将来性のある新しい人材を絶えず探している。そのレーダーが3人の男たちをとらえようとしていた。
1人目のドミニク・カルーソーは、クァンティコのFBI訓練アカデミーを出て1年そこそこの新米諜報員だが、決断力ある行動で残忍極まりない誘拐殺人事件を解決に導く。2人目はカルーソーの兄弟で海軍大尉のブライアン。初めての戦闘活動を終えてアフガニスタンから帰還したばかりだが、すでに注目株。そして3人目は、彼らの従兄弟に当たる若者、ジャック・ライアンJr.である。
ジャックは数々の陰謀や駆け引きを目の当たりにしながら育った。父親がCIAで昇進を重ね、やがてホワイトハウス入りする間に、ジャックはこの世界でのひとつの生き方と世界の仕組みとを、エージェントや政治家、アナリスト、秘密諜報部員、それにジョン・クラークやディン・シャヴェスといった特殊部隊のスペシャリストたちから学んできた。そのすべてを今すぐ生かしたい――しかし「ザ・キャンパス」の表のドアをノックしたジャックは、これから遭遇するものに対しては今までの経験など何ひとつ役立たないことに気づく。何しろそこはまったくの別世界…しかも状況はいちだんと危険度を増しつつあるのだ。