ルー・ドナルドソンはチャーリー・パーカー系の本格派アルト奏者としてデビューしたが、その後、軌道修正してファンキー~ソウル・ジャズの方向に路線変更した。58年録音の本作は、路線変更後の人気作。やはりこのアルバムの魅力は、黒さと絶妙な歌いっぷりにあるのではないかと思ったりする。あの時代のジャズを表現する時によく使われる、ファンキーとかアーシーといった言葉、それがぴったりと当てはまる演奏なのである。バックは盟友ハーマン・フォスターのピアノ・トリオ+コンガという編成。レイ・バレットのコンガを加えたことによって、ふつうのワンホーン編成とはひと味違う躍動感と華やかさを伴った演奏になっているあたりも本作の特徴といっていい。魅力的な曲がそろっているのも人気の一因だろう。
タイトル曲はもちろん、熱くエモーショナルなブロウが素敵なデンジル・ベストのバップ曲< 2 >「Move」、バレットのコンガが活躍するオリジナルの< 4 >「Play Ray」、さりげない演奏なのにいつまでも心に残る< 3 >「The Masquerade Is Over」< 6 >「Callin' All Cats」など、どの曲も心の琴線をくすぐる。(市川正二)