ブリュッセル生まれのギタリスト兼ハーモニカ名人、トゥーツ・シールマンス。ジョージ・シアリングやソニー・ロリンズ、クインシー・ジョーンズといった最高峰の華々しいジャズミュージシャンたちの相手を務めてきた男だ。この1988年のデートの記録は、ニューオリンズのバーボン・ストリートにあるルル・ホワイツ・マホガニー・ホールにて、優雅で軽妙なシールマンスがライヴを繰り広げる模様をとらえている。
   バンドは一流の顔ぶれで、ピアニストのフレッド・ハーシュ、ベーシストのハーヴィー・シュワルツ、ドラマーのアダム・ナスバウムが参加。彼らに支えられ、シールマンスはスタンダードとオリジナルを織り交ぜながら多彩で聴きごたえのあるプログラムをこなしていく。シールマンスによるメロウでジョー・パスばりのギター・ラインと詩的で鋭いハーモニカの音色は、「The Days of Wine and Roses」や「The Meaning of the Blues」などの人気曲に輝くようなリリシズムを吹き込んでいる。セロニアス・モンクのトリッキーな「Three in One」は見事に描き出され、シールマンスの代名詞と言えそうなチューン「Bluesette」は耳に付いて離れないメロディックな色調を今も保っている。シールマンスは時間を超越した音楽的画家なのだ。(Eugene Holley Jr., Amazon.com)