新技術の投入は、未知の世界への挑戦である。たとえば「コメット」のデビューに始まるプロペラ機からジェット機への世代交代は「速さの追求」という面で画期的であった。しかし速度を出すために飛行高度を上げたことで「機内の与圧」に問題を起こしていた。それに気づくのは、数度の空中分解による墜落事故を経験してからであった。
その当時と比べはるかに安全になったとされる現代の旅客機でも、たびたび墜落事故は起きている。過去に経験しなかったような事態が発生する。トラブルをトラブルとして認識しない、トラブルの原因がわからない、そして墜落する。
事例をもとに技術的解説を加えるというスタイルは第1巻と同様で、内容的にも高度である。また、時代ごとの墜落原因の解説はそのまま航空技術史として読むこともでき、外見的にはさほど変化のないジェット旅客機の中身の変化がよくわかる。
事例に挙げられている事故は、多くは技術的問題よりも人為的な理由から発生したものである。当然注意が払われなかったのは、危険性について体験的知識が欠如していたからである。だとすれば、今後どれだけ技術的な進歩を見ようとも、絶えず未経験の危険と隣り合わせであるということになる。技術過信を戒めた書といえる。(南條 剛)