四つ願って、二つを足して、一流歌手の仲間入り
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今年は、ちあきなおみがデビュー(1969.6)して40年目に当たるということで、11月14日,21日の二週に亘ってNHK-BS2で特集が組まれ、そして12月23日には彼女のワンマンショーのライブ盤3点全てがコロンビアから発売されました。ファンにとっては嬉しい限りです。
その中の一つが、このアルバム『ちあきなおみ オン・ステージ』(1971.5.25)の復刻版で、今回初めてCD化されました。2枚組CDのラベルが当時のLPを模してプリントされているのも嬉しいですね。音質も良好です。
昭和46年(1971)2月13日〜19日、日劇で行われた「ちあきなおみショー」のうち、17,18日のステージ模様を実況録音したもので、昭和28年、5歳のときに「白鳩みえ」の芸名で歌ならぬタップダンスで日劇の舞台(4月29日〜5月4日「ゴールデン・ジャズショー」)を踏んでから18年目にしてワンマンショーの主役の座に就いたちあきなおみ、ここに至るまでの悲喜交々万感の思いは当然あったものと思いますが、このステージからは只ひたすら、一所懸命に取り組む姿が伝わってきます。
帯に“ちあきなおみの<知られざる>新しい魅力を<ここに>結集!!”とあるように、「殺陣田村」を披露したり、落語の小噺を挿んだり、それまでのレコーディングは固よりTV等でも歌ったことの無い股旅ものや任侠ものを披露するなど、その後の彼女の歩んだ道程を知る私たちにとって、とても珍しく貴重な内容になっています。
註)デビューの前年から鈴木淳のレッスンを受けるのですが、その初日に“得意な曲を一曲”と所望されて歌ったのが「兄弟仁義」であったと言います。16歳からキングレコードの作曲家吉田矢健治のレッスンを受けていますが、そのときからというよりも13歳からのどさ回りを通じて身に付いた節回しなのでしょう。鈴木淳から徹底的に矯正されたコブシですが、このステージでは、丸で枷を解かれたかのように、存分に発揮しています。
演奏(碓井文雄とニュー・ラテン・オーケストラ)のブラスの音が耳に付くのが玉に瑕ですが(当時の雰囲気を伝えてくれて懐かしい思いもありますが)、それでも「人生の並木路」から「今日でお別れ」までの3曲は、ピアノだけの演奏で彼女の歌を際立たせて聴かせてくれます。
就中「雪が降る」が素晴らしいですね。ちあきなおみの場合、二音抜かない曲、それも短調のものが、最もその音色を活かすように思います。