上方落語の系譜を受け継ぐ噺家たち
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現在、上方落語の系譜を継ぎ、本家、上方・桂文治の末に当たるのが、故・五代目・桂文枝、三代目・桂春團治、三代目・桂米朝の桂系。笑福亭を守ってきた、その末の一門。五代目笑福亭松鶴の弟子である松之助が五代目のその雰囲気とネタを伝える。露の五郎は、二代目春團治の系統。林家は、そのむかしは、一時代を築いた一門だった。しかし、林家正楽没後、林家は、上方から絶えてしまった。様々あって、5代目笑福亭松喬が、二代目林家染丸を襲名し、今に残る。そのような経緯から、下記の上方の噺家達の名前は、大きい。
@林家染丸「豊竹屋」
四代目・小染の亡き後、現在の林家(東京も現在は、林家を名乗っているが、元々東京は、林屋だった。上方林家は、東京の林屋からの枝流れのはず。なのに本家が林屋を捨ててしまい、林家をなのるようになった)の総領である。噺は、まだまだだろうが、上方落語特有の下座継承者としての貴重な存在であり、落語だけではなく、踊りも踊れなければならない上方落語ネタを多く演じる噺家。「豊竹屋」もそのひとつ。染丸の持ちネタ「稽古屋」などは、故・桂文枝が演じるくらいで他の噺家は演じられなかった。
A笑福亭松之助「寄合酒」
五代目松鶴の弟子。五代目亡き後、兄弟子の六代目・松鶴と共に笑福亭を支えてきた。松之助は、昔の噺家の修行を行ってきただけにきちんとした噺の流れを継承しており、時間の関係からか、「寄合酒」を演じているが、本来は、もっと大きな噺のネタを持っている。『三人兄弟』や『堀川』など、難しいネタも・・・。しかし、松之助の仁に合った笑いの多いネタがやはり聴き所か。
B桂米朝「抜け雀」
言うことはない。
C露の五郎「浮世床」
一時、落語界を離れて、芝居に傾倒していたが、落語界に復帰。上方の他の一門が演じない上方落語ネタを多く持っており、貴重な人材。病気の後なので、もどかしいが、やはり、面白い。話しているだけでおもしろさが伺えるのが、この現・露の五郎兵衛。
D桂春団治「代書屋」
この人を抜きにして、東西落語の巧さを語ることは出来ない。登場人物の演じ分けでは、随一。『宇治の柴舟』のようなネタによっては、派手さはないが、『野崎参り』や『皿屋敷』は、初心者も通をも引きつけてしまう。この人をおいて、名人は語れない。高座にかけるネタ数は少ない。理由は、「直接、師匠連に教えてもらっていないから」。「代書」も笑いが多い。春團治のお家芸。
E桂文枝「天神山」
この人の高座には、華がある。長屋のはなしをさせれば一品。
評価の仕方は、様々あるだろうが、東京の「人情話信仰」「素話信仰」を上方落語に求めるのは土台、二階と三階で相撲を取るようなもの。無理な話なのだ。
これらの噺家は、上方落語界の重鎮であり、重鎮候補(染丸)であることには、違いがない。
また、このDVDだけを見て、力量を図るのも無理です。DVDの収録時間が許しません。これらの師匠方の力量を見るのは、やはり、高座に上がっておられる時にしか分からない。