本DVDは、福笑師の初めての高座の記録として後世記憶されるのではないか。これほどの力のある人が、今までCD1枚、ビデオ1本発売されていないことをかねがね不思議に思っていたので、「ようやく」の感が強い。当方が思う同師新作の特徴は、①するどい現代性、②緊密な構成、③それらを支える古典落語の素養に裏打ちされた話術だと思う。時を得れば同師は、いわゆる若者に人気のある今様の若手漫才師を、現代性という点も含めて正面から力でねじ伏せられる数少ない落語家ではないか。同師の新作には、もっと良いものもあるはずで、是非次回は、枝雀師の再来とも思える同師の、独演会を発売してほしい。
三枝師の「妻の旅行」は、相変わらず上手くて面白い。「立体落語」は、出演者自身も言っているように、本当の落語の方がよかったのではないかと思った。