現在のディープ・パープルのメンバーたち――ギラン、グローヴァー、ペイス、モーズ(リッチー・ブラックモアの代わりにギターを担当)、そしてドン・エイリー(かつてレインボーやオジー・オズボーンのバンドに在籍したオルガン演奏のスペシャリストで、最近パープルを円満に脱退したジョン・ロードの後釜にすわった)――は、昔ながらのロックなノリを再現してみせる。「House of Pain」(音楽はレインボーの「All Night Long」のような感じ。歌詞は「俺の女は不実だが、そこが好きなんだ」という感じ)や「Silver Tongue」がその例だ。
どんなに頑張ろうとトム・ジョーンズの色気に太刀打ちできる中年男はいない。ディープ・パープルは潔くそのことを認めている。だからこそ「Doing It Tonight」はセクシーであると同時に冗談半分な内容なのだし、ファンキーで茶目っ気あふれる「Picture of Innocence」は身持ちの固い娘たちに向けたイアン・デューリーの「Sex & Drugs & Rock & Roll」といえそうな曲になっているのだ。スティーヴ・モーズによるギター・インストゥルメンタル「Contact Lost」(パープル・ファンだったインド出身の宇宙飛行士カルパナ・チャウラに捧げられている曲。チャウラはスペース・シャトル「コロンビア号」の事故で亡くなった)とニュー・フォーク「Never a Word」の2曲は新境地を示している。一方、「Haunted」(女性ソウル・シンガー陣をフィーチャーした、胸を揺さぶる忘れがたいバラード)はディープ・パープル史上最高のチューンで、リチャード・アシュクロフトあたりが「最近のナンバー・ワン」に挙げそうだ。このレベルの楽曲がもう2、3あれば、『Bananas』は文句なしの大傑作になっていたところなのだが。(Kevin Maidment, Amazon.co.uk)