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バナナズ (CCCD)

価格: ¥1,800
カテゴリ: CD
ブランド: EMIミュージック・ジャパン
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   まじめにつけたとは思えないタイトルからして、すでにディープ・パープル・ファンの一翼を担う保守派層からの反発を買ってしまった本作『Bananas』。保守派層とは、この種のおふざけはシリアスなミュージシャンの作品にふさわしくないと考える手厳しいファン(フランク・ザッパなど聴いたことがないに違いない)や、このアルバム・タイトルの変更を求めて運動を起こした連中のことだ。だが、タイトルごときに振り回されないで頂きたい。『Bananas』は、強烈なリフに飢えた根っからのパープル・ファンの期待に応えると同時に、まったくパープルらしくない破天荒なユーモアをたたえた異色の楽曲によって新たなリスナー層をも魅了するはずだ。

   現在のディープ・パープルのメンバーたち――ギラン、グローヴァー、ペイス、モーズ(リッチー・ブラックモアの代わりにギターを担当)、そしてドン・エイリー(かつてレインボーやオジー・オズボーンのバンドに在籍したオルガン演奏のスペシャリストで、最近パープルを円満に脱退したジョン・ロードの後釜にすわった)――は、昔ながらのロックなノリを再現してみせる。「House of Pain」(音楽はレインボーの「All Night Long」のような感じ。歌詞は「俺の女は不実だが、そこが好きなんだ」という感じ)や「Silver Tongue」がその例だ。

   どんなに頑張ろうとトム・ジョーンズの色気に太刀打ちできる中年男はいない。ディープ・パープルは潔くそのことを認めている。だからこそ「Doing It Tonight」はセクシーであると同時に冗談半分な内容なのだし、ファンキーで茶目っ気あふれる「Picture of Innocence」は身持ちの固い娘たちに向けたイアン・デューリーの「Sex & Drugs & Rock & Roll」といえそうな曲になっているのだ。スティーヴ・モーズによるギター・インストゥルメンタル「Contact Lost」(パープル・ファンだったインド出身の宇宙飛行士カルパナ・チャウラに捧げられている曲。チャウラはスペース・シャトル「コロンビア号」の事故で亡くなった)とニュー・フォーク「Never a Word」の2曲は新境地を示している。一方、「Haunted」(女性ソウル・シンガー陣をフィーチャーした、胸を揺さぶる忘れがたいバラード)はディープ・パープル史上最高のチューンで、リチャード・アシュクロフトあたりが「最近のナンバー・ワン」に挙げそうだ。このレベルの楽曲がもう2、3あれば、『Bananas』は文句なしの大傑作になっていたところなのだが。(Kevin Maidment, Amazon.co.uk)