巡礼
価格: ¥1,615
フォーク第二世代ともいえる朝野由彦は、1973年ごろから「春一番コンサート」にも出演。75年リリースのこのファースト・アルバムは、そんなプロフィールからは意外なほどポップなサウンドを聴かせる1枚だ。アレンジを国吉良一が手がけ、カントリー系ギターの名手である徳武弘文やムーンライダーズのかしぶち哲郎などが参加したふくよかなサウンドをバックに、素朴ながら印象深い歌声を響かせる。なかでも、「ゆっくりかまえて生きればいい」と歌われる歌詞と冬景色とが重なり、思わず胸がキュンとなる1曲目の「冬ごもり」は、名曲中の名曲。叙情的な曲でもどこか乾いた部分があるのがこの人の特徴で、70年代のフォーク・シーンでは貴重な個性だったと再確認した。(木村ユタカ)