フロイト、アドラー、ユングの流れを組む精神分析学は、それまで人間が意識中心に動いていると思われていたのに、実は無意識に支配されている部分が非常に大きいのではないかという、人間観に大きな転換点をもたらしました。人間は進化したおかげで、動物のような本能が壊れてしまったために、自然からずれてしまいました。意識から排除して抑圧した影は、それが大きくなると、逆に力を持ち、様々な形で反動を形成するということになるそうです。そのため、自我と影のバランスが保たれるよう、影にもきちんと向かい合うことが大切だとされています。親子間において、親と全く正反対の性質を子供が持つ、というような形で出てくることもあるようです。より社会的には、ある集団が影を抑圧していると、それを他集団に投影して戦争に発展しやすくなるということや、影を悪魔やお化けといったものに、文化的にイメージ化する、ということもあるようです。この本は、大変分かりやすく、さらにフロイトやユングに関連する事柄を、ほぼ網羅的に書いていますので、入門書として非常に良いのではないかと思いました。