性犯罪は、どうして起こるのか？という原因が掘り下げて、わかりやすく解説されている。
成育歴を含めた性犯罪の原因が明確にしてあるので、犯罪抑止のポイントも掴めており、再犯防止に役立つ構成になっている。
犯人は捕まっても、なかなか「そこまで悪い事をした」という自覚が持てないのが普通らしい。
なぜ、性犯罪を犯しておきながら、罪悪感に乏しいのかも、わかりやすく解説してあり参考になった。
また、性犯罪に「発達障害」が過剰診断される危険性も著者は危惧している。

以前は男性の性犯罪は性的欲求や衝動によるものだと思われていたという。実際今でもそう思っている人たちも多いのではないだろうか。
しかし現在では、性犯罪は性的衝動にのみよるのではなく、支配・優越・強さの主張といった様々な欲求から行われるものであり、一回限りのものではなく、計画的で非常に習癖性の高い行動であると考えられており、本書も一貫してその考え方に基づいて書かれている。

構成としては、まず性暴力の理解から始まり、現在行われている治療教育の方法や、治療事例に続く。また、最後には実際に性犯罪者が治療教育において読むことになるワークブックと、それに関する事例も掲載されている。
このように、性暴力やその治療教育に関する理論面を学ぶというよりも、非常に実践的な本であって、「治療教育って一体どんなことをしているんだろう？」と考える人、にはうってつけの本である。
文章も読み易く、誰にでも読める内容だと思う。そして、誰にでも読んで欲しい。
これが治療教育の最前線なんだろう。

性犯罪に関する書籍は，とかく概念的，力動的に描かれやすく，一見わかったように思えても，「で，どう介入すればいいの？」と思ってしまうものが多い。しかしこの本は，とにかく実践的。諸外国の研究に基づいた理論を押さえつつも，単に理論紹介にとどまらず，著者の治療経験からくる「へえ」とうなる鋭い見方も満載です。読んでいくほど，性犯罪というものが，ちゃんとした知識を持って，特別な介入をしなければならないかが良くわかります。
ワークブック（翻訳版）がついているのは，とにかくうれしい。そして，それを使った事例まで載っています。
とにかく，目の前にいる性犯罪者（少年）に，どう手当をすればよいのか，悩んでいる方，初心者から，ちょっと行き詰ったベテランまで，手にしてみて損はないと思います。

著者の「非行少年の加害と被害―非行心理臨床の現場から」は非行臨床の実践的テキストであるが，本書ではとくに性犯罪についての理解，査定，治療教育プログラムについて，現場で実際に役立つようにまとめあげられている。性暴力の神話や性犯罪報道の風説の誤解を解いてくれて，欧米での治療の単なる紹介ではない地に足のついた臨床現場の地道な取り組みが解説されている。現時点で性犯罪問題について矯正教育の立場から示された一つの決定版的指針であるといえる。