いまだに石油がわからない
★★★☆☆
今読むと、ちょっとつらいかな。
WTI原油価格が150ドルくらいになったと思ったら、暴落、そして今は80ドルくらい。
一方で、地球温暖化防止に向けて化石燃料の消費抑制への圧力が今後強まっていくだろう。
そうしたとき、石油はどのようなポジションに置かれるのだろうか。その問いに答えてくれるのが本書だ。
石油というと環境問題の悪役のように言われるが、本書では必ずしもそうではないと指摘する。石油によって薪炭など在来バイオマスの需要が抑制され、自然が回復したり室内環境が改善したケースなどがあるという。また、急激なバイオエタノールの消費拡大は食糧不足や熱帯林破壊につながっているということは、すでに指摘されている。さらに、燃費の良いディーゼル車は以前とは比較にならないほどクリーンになっているとも。
結論を言えば、石油そのものには、他の資源とは異なる利点も多く、利便性などを考えても、将来にわたって必要なエネルギー資源だということだ。ただし、その利用の方向性としては、いかに効率的な利用を確立するのか、ということにかかっている。また、代替エネルギーの開発を進め、石油の消費そのものを減らすことも必要だ。そのためにさまざまな技術開発が進められている。
本書は石油学会の50周年を記念して執筆されたものであり、石油そのものに対して贔屓目を感じないでもない。しかし、石油開発の歴史などがコンパクトに紹介されており、石油そのものについて知る上では便利な本だ。ただし、分散型発電ということになると、天然ガスやバイオマスなど石油代替燃料の開発の方が重要だという結論。その結論のためにも、石油を知ることは重要だということだ。
石油を知る
★★★★☆
石油の成り立ち(原油の存在の仕方)やメジャーの歴史、またCO2排出に対する他のエネルギーとの比較など、石油を知る上でよくまとまった好著だと思います。
石油学会の広報誌での出版のつもりだった、とのことで石油業界に利するような内容かと思いましたが意外とそうではありませんでした。
石油使用=CO2排出 と単純な構図でテレビのニュース等を見ている人にはぜひ一読をおすすめします。
これ一冊で、現代の石油情勢が大体分かる。
★★★★★
2008年度に「社団法人石油学会」が創立50周年を迎えることを記念した企画された本で、
第1章:石油をめぐる世界の動き(和光大学の先生著)
第2章:石油を上手に大切に使う(新日石の社員著)
第3章:石油文明は終わらない (和光大学の先生著)
という3部構成。
最近「石油を使うから二酸化炭素が増えるじゃないか!」という感じに受け取れるマスコミ意見をよく見かけるような気がしますが、それはそれで置いておいて、冷静に石油文明というものを見つめて整理してる本だと思います。
内容は・・・、
・脱石油を図って、石炭や木炭を使うとどうなる?
・水力発電のためのダムを作ったときの大気環境への影響はどうなる?
・バイオ燃料って何? ホントに環境にいいの?
・日本でディーゼル車がはやらないのは何故?
・燃料電池自動車、水素自動車・・・。さて燃料となる水素はどうやって作る?
・エンジンの潤滑油で燃費が改善する理由。
・石油資源の寿命はあと何年?
・原油価格高騰で注目される天然ガス、オイルサンド、オリノコタール、メタンハイドレート・・・。もしかすると、日本はエネルギー資源大国かも。
・原油価格はどうやって決まる?(国際石油カルテル〜OPEC主導〜NYMEXへ)
・石油をすぐに使わないようにすることはできない。これからは効率的な利用が核心に。
等々・・・。
いろいろ解説してますが、解説の底辺に「簡単に『化石エネルギーを使わないようにしよう』なんてできないでしょ」と現実的に考えてるところが良いです。
なお、本書あとがきに「出来るだけ専門用語を使わずに平易な文章にした」と書いてはいるけど、石油に携わってない人にはちょっと難しいところもあるのでホントに理解して読みすすめるには解説がいるかも。
石油関係者は、読んでおいて損はないと思います。
今知りたい石油情報がよくまとまっている
★★★★★
石油は、環境破壊として悪者扱いのされる風潮だが、実は環境に優しいエネルギーだとは意外だった。
原油高騰によって、安い石炭を使う方がよっぽど環境破壊だという一筋縄ではいかない環境問題が浮き彫りされている。
現代生活をおくるにも、石油をなくしては、交通関係だけでなく化学製品(プラスチック、薬など)の恩恵を受けられないため、
安易な脱石油は控えた方が良さそうです。
原油高騰の原因や、石油代替エネルギーのことや今後の展望など充実していて、
これ一冊で、一般人が知りたい石油に関する知識は充分です。
石油資源の現状と今後
★★★★☆
“石油”という身近なようで縁遠い資源について、専門家がわかりやすく解説した良書。
メジャーと呼ばれる巨大資本の成立から現状、そしてオイルサンド・メタンハイグレード
といった代替エネルギーなど、今後の展望も含めてよくまとまっている。
自分にとってサプライズだったのは、石油というのは実は環境保護的には優等生であって
安易なバイオマスや代替エネルギーの利用は、むしろ二酸化炭素排出量を増やすということ。
この点だけでも読んでみる価値はあると思う。