Surrounded by Silence
価格: ¥1,052
『Surrounded By Silence』(「静けさに囲まれて」の意)というタイトルは『Bedroom Producer Gone Wild』(「ベッドルームのプロデューサーはワイルドになる」の意」)に変えたほうがいいかもしれない。ラップトップサウンドの錬金術師プレフューズ73(スコット・ヘレン)について崇敬すべきは、RJD2やディプロのように高度な技術で、ビョーク・ファンやバックパック・ラップ支持者、プルート育ちがあこがれるようなめったにない音の風景をつくるという点ではない。そういう音の実験があまりうまくいかなかった時にはどうなるだろう? トラックとトラックの間にいくらか密接な関係が感じられた『Vocal Studies And Uprock Narratives』とは違い、このアルバムでプレフューズはコラボレーションにややこだわりすぎ、さまざまなジャンルから10人以上ものゲスト・ヴォーカリストやMCを迎え、芳しくない結果となっている。ゴーストフェイスとデフ・ジャックスのエル・Pのきわめて珍しいデュオが「Hideyaface」に参加してくれているが、ヘレンの音の氾濫で集中力に欠けて聴こえるし、マスター・キラーとGZAが景気づけしてくれている「Just The Thought」にしても同様だ。『Surrounded By Silence』はヘレンの願望だったRZAやデフ・ジャックス(エイソップ・ロックとビーンズもゲストとして参加)を好きなように使っていいという免許状だったのか? もしかしたら、そうかもしれない。だが、ヘレンが自分が一番いいと思うことに熱中した時は、きらびやかな音のコラージュを構築し、手当たり次第に何でもデジタル化して、ゴージャスなものが出来上がる。「Expressing Views Is Obviously Illegal」や魅惑的なバンジョーが入った「Pagina Dos」では、まさにプレフューズという電子音のリズムが聴ける。彼がそのビートを目立ちたがりのニューヨークのエレクトロ・インディー・ロッカー、On!Air!Library!のクラウディアとアレハンドラのデヘサ姉妹と組み合わせた「Pastel Assasins」や、ブロンド・レッドヘッドのカズをフィーチャーした「We Go Our Own Way」などは、ずっといい仕上がりだ。むらもあるが刺激的なアルバムではある。お試しあれ。(Dalton Higgins, Amazon.com)