ただし、茶目っ気たっぷりのメレンキャンプらしく、彼ならではのちょっとしたいたずらも見られる。ブルーミントンの街の住人だったホーギー・カーマイケルの「Brooklyn Oriole」やルシンダ・ウィリアムスの1980年の叙情詩「Lafayette」をカヴァーして故郷であるインディアナ州へのトリビュートとする一方で、「左翼陣営」の曲であるスキーター・デイヴィスの1963年の名曲「End of the World」を取り上げ、飾り気のない美しいヴァージョンで披露しているのだ。かつてはジェームス・ブラウンの物まね芸人と呼ばれていたメレンキャンプが、これほど見事な歌声を聴かせたことはない。
トリを飾るナンバー「To Washington」は、メレンキャンプの自作曲だが、実は「借りもののブルース」で、もともとは第30代大統領カルヴィン・クーリッジの時代に政治家たちへの問いかけとして歌われていた曲だ。今までにチャーリー・プール、カーター・ファミリー、そしてガスリーが録音している。今回はジョージ・W・ブッシュへの問いかけとして歌われるわけだが、ディキシー・チックスの不買運動を支持した人々が、これを聴いて新たにメレンキャンプのファンになることはないだろう。(Bill Holdship, Amazon.com)