今後は鶏インフルエンザ以降の養鶏問題、対策等をまとめた著書を期待したいい。
もちろん現在は本書の刊行当時とは社会状況も異なるし、すでに日本各地で大勢の方々が自然卵養鶏に取り組まれている。だから生業としての養鶏をするためには本書を読むだけでは全く不十分なのは言うまでもない。
それよりも本書の魅力は、文中の各所に現れている自然循環型農業の哲学にある。筆者は、石油と輸入食物に依存する現在の農業に警鐘を鳴らし、効率と利潤追求を訴求する現代社会のあり方に疑問を投げかける。その主張は筆者の実践に基づくだけに説得力を持つ。
本書に記された手法はたとえば、過剰な投資をせず廃品や自然にある物を利用するなど、養鶏に限らず、我々のライフスタイルを問い直すヒントに溢れている。