森と人間への愛情に溢れた自然賛美の著作
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自然志向が高まる今日、森の自然に対する筆者の慈しみと、森で謙虚になり本来の姿を取り戻す人間に対する愛情に、自然が好きな人は勿論、そうでない人も、感動をもって共感できる素晴らしい著作だ。
筆者は俳優であり野鳥の会会長の柳生博氏だ。氏は俳優として成功した自分の慢心が家族関係を壊しつつあると自覚し、八ヶ岳天女山の山麓の森に30年前に移り住み、雑木林を再生する野良仕事で人間関係を取り戻したという。森に身を置く喜びを広く一般に公開する目的で、20年前に雑木林を中心にレストラン・売店・芸術家の作品展示即売スペースなど配置した「八ヶ岳倶楽部」を立ち上げた。今年20周年に当たり、森の自然を舞台に、その想い、経緯、人間模様を筆者は熱く語る。
1/3以上の頁を費やした第1章で筆者は、家族を含む人間と森と森の動植物への熱い想いから八ヶ岳倶楽部を立ち上げた経緯を語る。以下2/3で筆者は、自然志向のエコ論、孫の人気を得る第2の人生の勧め、家族・スタフ・得意客など森の仲間達、森で暮らしたい人へのアドバイス、人間本来の生き方を育む里山論、八ヶ岳倶楽部を支える作家像、などを語る。
八ヶ岳の自然を舞台として、全巻に筆者の森と人間への愛情が満ち溢れている。八ヶ岳や八ヶ岳倶楽部を知る人も知らぬ人も、筆者の自然志向に共感し感動を覚える人が多いであろう。また八ヶ岳倶楽部を訪れて筆者の想いを実感したいと思う人が増えるに違いない。