秋吉敏子が自身のジャズ・オーケストラと共に生まれ故郷の中国でその伝統音楽とジャズとの融合に挑んだ これまで日本のジャズの礎を築いたジャズ・ピアニスト秋吉敏子の生まれ故郷が旧満州ということは知っていたが、その故郷への想いの強さを知る機会はなかった。だが、本作のライナーに目を通すことで本作の重みがひしひしと沸いてきた。今回のこの上海公演に先立ち、2003年に解散したバンドを再集結させ、公演までに完璧な状態に仕上げる作業も簡単ではなかったであろう。だが、それだけでなく今回は二胡、中国琴など中国楽器を加えて中国の伝統的な音楽をジャズに取り込む試みも行っている。この公演のためにアレンジした中国民謡「康定情歌/カンディンチングゥ」をはじめ、アメリカに渡って4年後の1960年に作曲した「ロング・イエロー・ロード」など、全10曲に渡って熱演が繰り広げられ、娘マンディ・満ちる (vo) と夫ルー・タバキン (ts) の参加にも特別な想いを抱かずにはいられない。 (加瀬正之)