シモーネといってもブラジルの人気歌手とは別人。オーストリア出身、2000年以降ニューヨークを中心に活動している新進女性ジャズ歌手だ。これがデビュー作となる。81年9月生まれというから、年齢的にはまだ若いけれど、その歌声は非常に落ち着いていて、大人の色気を感じさせる。本名シモーネ・カップマイヤー。内容は、ピアノ・トリオをバックに新旧のスタンダードをじっくりと歌っている正攻法のヴォーカル・アルバム。といっても、エラ、サラ、カーメンに代表されるような純ジャズ路線ではなく、ペギー・リーやジュリー・ロンドン、あるいはドリス・デイ的な路線を踏襲した雰囲気のあるヴォーカルだ。
一部スティングやビートルズの曲も取り上げている。ダイアナ・クラールの成功を機に、スタンダード・ヴォーカルの魅力が若い人たちに認識されるようになったのは喜ばしい。そういう布石があるからこそ、オーストリアからシモーネのような新人が登場したのだろう。愛くるしいルックスも魅力で、スター性も十分備えている。(市川正二)