ハリウッドで最もJazzを愛する男による至福のライヴ
★★★★★
現在のアメリカ映画界で最もJazzへの愛と造詣が深いのは、もちろんイーストウッドとW・アレンである。今作は、イーストウッド自身がプロデュースし、映画で使用したJazz音楽の数々をミュージシャンたちがカーネギー・ホールで演奏した模様を収めている。99年にワーナーでCD化されたライヴ・ドキュメンタリー。映像を撮っていたなら何故すぐ出さなかったのか不思議だが、ファンには嬉しい1枚。以下は、CDを聴いたのみの期待を込めたレビューなのでご容赦を。
いきなり、K・バロンとB・ハリスの両御大による“MISTY”から幕が開ける。劇中モントレー・ジャズ・フェスティバルも登場したイーストウッドの処女作「恐怖のメロディ」で、この曲が、美しさの中に何ともミステリアスな物哀しさを醸し出して、実に効果的かつ印象的に流れていた事を思い出せる方なら、ノレる事確実。以下、監督に専念し、C・パーカーとT.S・モンクのジャズ・ジャイアンツの一生を追った「バード」や「ストレート・ノー・チェイサー」から“LAURA”や“ROUND MIDNIGHT”らの名曲をフィーチュア、自身が影響を受けたL・ヤングにオマージュを捧げたかのような“THESE FOOLISH THINGS”に、「ホワイトハンター、ブラックハート」で流したエリントンの“SATIN DOLL”。更に自ら作曲、ピアノも聴かせた「ザ・シークレット・サービス」など本格的Jazzファンも唸らせる楽曲たちに、「許されざる者」、「タイトロープ」から、「センチメンタル・アドベンチャー」、「夕陽のガンマン」と言ったC&Wまで盛り込んだ大サービスぶり。(ただし、オリジナルはアート・ペッパーの手による「ガントレット」は未演奏)。演奏者もC・マクファーソン、J・レッドマン、J・カーターら新旧入り乱れての多彩な顔ぶれ。"NOW'S THE TIME"での火を噴くようなセッションなど溜め息もの。イーストウッドもラストに登場、ジョークを交え、謝辞を語る。
「アメリカが世界に誇れる文化はジャズと西部劇ぐらいだ」と言い放つ男の、Jazzとの甘美にして濃厚な至福のひとときを体験出来ればと思う。