まず、本書を開くと巻頭カラーに色鮮やかなムカデとヤスデの写真が掲載されている。それにたじろぎつつページをめくっていくと以降、多足類についての解説、採集法、飼育法、標本作成法、研究のための基礎知識、研究の手引と続いてゆく。これらの内容からわかるとおり、初心者向けの多足類研究の手引書となっている。「研究の手引書」というと無味乾燥な印象を与えるが、これがなぜか読ませてしまう。それは、ネズミをエサとするような大ムカデに驚くといったおもしろさとは別に、読んでいると、子どものような無邪気さで澄んだ目を輝かせながら 「好きでたまらないムカデやヤスデについて」夢中で語っている著者の姿が行間からうかんできて、読んでいる方までなんだか楽しくなってくるからなのだ。
全体で178ページほどの比較的薄い本ではあるが、研究方法、参考文献や資料の入手法などは著述がとても丁寧で、著者の経験がよく反映される。昆虫が好きで、趣味として実際に研究を始めたい人にはおすすめである。(別役 匝)