お茶目なサスペンス。
★★★★☆
野党初の首相・金田が仙台で凱旋パレードを行なうなか、宅配ドライバーの青柳(堺雅人)は大学時代の同級生・森田(吉岡秀隆)に呼び出され、「お前、オズワルドにされるぞ。逃げろ」と忠告される。その時、突然、爆発音がして…。人気作家・伊坂幸太郎の同名小説を中村義洋監督が映画化。巨大な陰謀に巻き込まれ、首相暗殺の濡れ衣を着せられた男の必死の逃避行を、畳み掛けるような展開で描いたスリル満点の、全編にわたってお茶目なムードが漂っているサスペンス。
謎の男(濱田岳)、元彼女(竹内結子)、仕事仲間(渋川清彦)、昔馴染みの花火師(ベンガル)、裏街道の男(柄本明)、アイドルタレント(貫地谷しほり)…。「信頼」で結ばれた人々の助けを借りながら、主人公があの手この手でピンチを擦り抜ける逃走劇の狭間で、かつての友情物語が感傷的に語られるんだけど、その間合いが絶妙でお見事。カローラやiPod、「たいへんよくできました」マークなど、大道具・小道具も実に効果的に使われていて楽しい。
主な出演はほかに劇団ひとり、相武紗季、ソニン、でんでん、大森南朋、永島敏行、香川照之。青柳の父親(伊東四朗)がワイドショーのカメラに向かってあるメッセージを吐く。これは邦画史上に残る名場面として語り継がれるだろう。
特典ディスクの内容もテンコ盛り。おススメです。
★★★★☆
本作は日本版「逃亡者」だが、交通機関を止めているために移動範囲は仙台の中心部のみという限定の「逃走」劇だ。そのため堺演じる青柳も地上・地下を問わず狭域を逃げ回る。この「せせこましさ」が本作成功の要因だろう。これが北海道とか樺太とか、あるいは23区内に逃げ出せたらストーリー的にも散逸してしまうからね。中村組常連の俳優たちのアンサンブルも抜群で、最後まで一気に魅せ切ってしまう。香川照之は中村組初参加だが、タケウチとの共演で、かつ花火とくると、どうしても篠原組の大傑作「天国の本屋」を思い出してしまうが(笑)、今回は敵味方の関係だ。みな小さな役でも喜々として集まるあたりも、中村監督との信頼関係からだろう。オール仙台ロケで、日本映画としては長めの撮影期間2カ月という大作だが、現役首相をテロで失うとはショッキングな設定だった。結局真犯人はよく分からなかったのだが、今回の軸は明らかに人間関係がメインになっている。青柳の逃走と、それを助ける仲間のコンビネーションで展開していくので、権力側の描写は少ない。あんなにブッ放していいのかと思う永島敏行演じる刑事と、常にイラついている香川が目立つくらいだ。そう考えて観ると、逃げ果せた青柳の行動には爽快感を感じる。最後は権力側の真犯人を暴き・・・みたいなストーリーにするなら、パート2が必要だ。本編ディスクにはHDで「ビハインドストーリー」も収録されており、こちらも見応えがある(本編には登場しないさくらがいい味を出している)。特典ディスクはDVDだが、メイキングをはじめテンコ盛りの内容だ。いかに雰囲気のいい組であるかも分かるので、必見である。総合的には星4つです。
伊坂(原作)作品としてはこんなもんかな
★★★☆☆
伊坂幸太郎の作品は他に本でラッシュライフを読んだことがあるが、今作も導入から引き込む力は満点。これからどうなっちゃうんだろう?とワクワク期待させる、まさにジェットコースタームービー。反面、オチが弱い。この映画においては強引。あのオチならどっからでも持っていける。結局、事件のあの結末も当局が操作したということになるんでしょう?
あとは、まだオチに目鼻も付きかけてすらいないのに、感動をどうぞ的な花火はいらない。その前にやるべきこと(話の流れ作り)をやってくれ。他の登場人物は、父親はカメラの前であそこまで言うのも現実離れしているし、主人公に拘束された警察官も主人公に傾きすぎ。
境雅人は好感の持てる俳優ですが、一度観たら十分です。
素晴らしい映画です
★★★★☆
映画も観ましたがかなりのオススメです。
ただ残念なのはチャぷター選択がないことでしょうか。
最後のシーンだけ観たくても延々とスキップしないといけないのはいただけませんでした。
習慣と信頼
★★★★☆
アメリカの大統領暗級の陰謀が日本で展開されたとき、オズワルドにされかかった人間は徒手空拳でどう戦うかというストーリーだが、成功していると思う。駆け足や説明不足の部分はあるにしても。
米国映画だとマット・デイモンあたりが主演で派手な銃撃戦を交えて、という展開になるのだろうが、日本では主人公青柳役の堺雅人が習慣と信頼を武器にして戦う。習慣の第一は宅配ドライバーという体を動かす仕事に就いているということで、とにかく走る、走る。このスピード感が作品の基調。習慣が身を助ける場面が他にもあるが、それは観てのお楽しみ。
信頼とは大学生活をともにした男女の仲間の存在。各自が現実との格闘の日々を過ごしている中で、青柳の危機をきっかけにつながりを取り戻す。本作は過去の甘い日々と厳しい現実の対比の物語。その青春時代の追憶の曲としてゴールデンスランバーが巧みに使われる。斉藤和義の歌もエンド・ロールに流れる音楽として最近の邦画の中で抜きんでている。
青柳は他の人からも信頼されるが、父の信頼が一番嬉しかっただろう。出番は少ないが、伊東四朗はさすがに上手い。
ショットガンをぶっ放す永島敏行も不気味さ満点。
うめきちのおすすめ
★★★☆☆
伊坂幸太郎の作品ってやっぱり映像化むずかしいですよね。でも、この映画は引き込まれます。
青春のススメ
★★★★☆
いろいろな意味で荒唐無稽です。本当に。
でも、何故だか心に響くのです。
逃走劇でありながら追い求めている。そして探し当てたものは…?
観ているうちに、いつの間にか自分を重ね合わせてしまう、不思議な作品です。