本書は、歴史を民族や地域別に再整理し、
それぞれについて数ページで簡単に出来事をまとめたものです。
特定の民族の立場に偏ることなく書かれている点が長所ですが、
紙面が短すぎるせいか内容は恣意的に選ばれた歴史上の出来事や
キーワードが数個ただ並べられているだけになってしまっています。
致命的とも思われるのは、本書の狙いであったはずの
「歴史を民族別の切り口で視たがゆえに見えてくる新しい視点」は
残念ながら全くないことです。
同様の趣旨の書籍では、「民族の世界地図 文春新書」(21世紀研究会編集)
のほうがもう少し本来の狙いを達成しています。
民族問題に疎い日本人にとってこのような書籍が刊行されること自体は
喜ばしいことですので星をふたつにしましたが、
他の精力的な著者、出版社の著作の出版を期待したいところです。