ただ女性たちの横顔をつづった部分についていえば、もの足りなさは残った。彼女たちが日本へやってきた経緯、決意、日本で暮らす苦労や戸惑い……、そういった人生模様を私としては読みたかったが、本書は彼女らの店での振る舞いなど表層的な記述に終始している。もっともその理由はわかる。著者は店長であって取材者ではないのだ。ホステスの私生活を詮索するような店長は嫌われてしまうだろう。
つまりこの本は店長だからこそ書けた物語であると同時に、店長であるがゆえに深めることのできなかった物語、といえるのではないだろうか。