本作は、最初の1小節から聴く者の心を奪う。この上なくエキサイティングな珠玉のナンバー「Ribcage」では、気だるく途切れがちなメロディーが大きなクライマックスへと凝縮される。このチャーミングなマントラをガイ・カーヴェイが(喉頭に平べったいマイクを当てて)物憂げな歌声で彩る――「太陽の光が/僕に命綱を投げるかのように/部屋の中に差しこむとき/僕に必要なのは君だけ(When the sunshine/ throwing me a lifeline/ finds its way in to my room/ all I need is you)」。その一方で、ロンドン・コミュニティ・ゴスペル・クワイアの渦巻くようなハーモニーがブラーの「Tender」を思わせるローファイで甘美な荘厳さを演出する。しかしながら、本作の大部分の曲は、いつまでも耳に残る「Snooks (Progress Report)」といい、イラついたセックスと気の滅入るような会話に満ちた「I've Got Your Number」といい、およそ仰々しさとは無縁だ。絶望から出発したエルボーが、恋に破れた者の優しさを身につけて帰ってきた――そんな魅力作である。(Christopher Barrett, Amazon.co.uk)