【セブン-イレブンで24時間受取りOK・送料0円!】 著者/訳者名:麻生幾/〔著〕 出版社名:講談社 シリーズ名:講談社文庫 発行年月:2001年03月 関連キーワード:センセン フコク 1 カヒツ カンゼンバン コウダンシヤ ブンコ せんせん ふこく 1 かひつ かんぜんばん こうだんしや ぶんこ、 コウダンシヤ 2253 こうだんしや 2253、 コウダンシヤ 2253 こうだんしや 2253 原子力発電所が並ぶ敦賀半島沖に北朝鮮の潜水艦が漂着した。対戦車ロケット砲で武装した特殊部隊十一名が密かに上陸、逃走する。彼らの目的は何か?未曾有の事態に政府はなす術を失い、責任のなすり合いに終始する。砂上の楼閣のごとき日本の危機管理を問うベストセラーに、最新情報を盛り込んだ完全版。
面白い!
★★★★★
「北朝鮮が日本に攻めてくる」、21世紀に入ってあながち空想とは言えない現実味を帯びてきたテーマをよく書いている。
有事法制がまだ存在しない時期、野党の追及を恐れて「正当防衛」その他の「神学的」言い訳に固執して、後手後手に回り損害を拡大していく日本政府。重火器を持ったプロの北朝鮮武装工作員に丸腰に近い警察で対応しようとするところは、1976年のベレンコ中尉亡命事件を髣髴させ、首相官邸に情報が届くのに何時間もかかるところは、明け方に起こった阪神淡路大震災をよそ事として昼近くまでのんびりと閣議を行っていたことを思い出させる。21人という少数の北朝鮮ゲリラの規模によるものか、米国があえて「日本が国内で解決すべき」と直接手を下さないことからつのる危機感。その代わりに台湾海峡に展開した米国第7艦隊に反応して臨戦態勢をとる中国。東アジア全域が戦争状態になりそうな危機がよく描写されている。
二重三重の間接コンタクトによるスパイ活動の諜報戦なしに、物理的暴力のみによる戦争がありえないことを思い知らされる。戦闘行動の描写も、映画的なドンパチではなく、実戦経験はおろか年間数えるほどしか実弾を撃ったことのない自衛隊員が、自分と変わらない「人間」としてどう殺し合いに赴くかが、よく描けている。
危機が最終的にあまりにもあっけなく回避されるところが肩透かしと言えばそれまでだが、金正日のある意味での臆病な性格がよく描けているとも言える。
不満なところを強いて挙げれば…
・最初の1章は「業界用語」がやたら頻発する「オタク」っぽさが鼻につく
・北朝鮮問題で大きなキーとなる韓国とロシアのことがほとんど出てこない
・米国を巻き込んだ全面戦争に発展する危険を侵してまで、北朝鮮が日本の原発に対して破壊工作を行う動機が全く不明。工作部隊がさっさと原発に到達せずに民間人や自衛隊に攻撃を仕掛けるのは、彼らも日本側の出方をはっきり把握しているのではないからと、解釈できなくもないが…
・危機の回避をもたらしたダブルエージェントによるディスインフォメーションの提供過程で、ダブルエージェント役に手の内を明かしてしまう不自然さ
でも、とにかく面白い。もし再加筆版が出るようなことがあれば、迷うことなく買うだろう。
愚劣で滑稽な日本と日本人の脆弱性がよくわかる
★☆☆☆☆
日本は、というより日本人は先の大戦の頃から全く進歩してないことがよくわかる。
責任の所在を曖昧にし、組織に転化する姿勢、責任の擦り付け合い、ご都合主義の判断、無駄な予算と無駄な軍事組織、非効率な機構と法制度。笑えるのは危機を演出し軍拡を画策し実行した旧軍事体制の亡霊の様な連中が本著を賞賛している点だ。日本帝国の惨めな滅亡とともに死滅したはずのそういった連中は本著によって冷笑されていることに気づいていないのは滑稽であり哀れでもある。特にここ数年の自民党政権で培われた○○脅威論に洗脳された人種なら喜ぶ本かもしれない
現実味があり恐怖を感じる。
★★★★★
特殊な訓練を受けた北朝鮮の精鋭11名が日本に上陸した!しかも彼らは、
対戦車ロケット砲や機関銃、そして手榴弾を持っている。厳重な警戒態勢が
敷かれるが、その内容はお世辞にも万全とは言い難かった。命令系統の煩雑さが、
末端への指揮に混乱を生じさせる。最新鋭の装備で臨んでいるはずなのに、
政府も警察も自衛隊も、たった11名の人間に右往左往させられている。
「向こうが撃つまで撃つな。」
「撃ってもいいが威嚇射撃にしろ。」
本物の戦争に突入するかどうかの瀬戸際なのに、上の人間のやることはマニュアル
どおり。臨機応変な対応がまるでできない。たった一つの命令を下すのに何時間も
かかるというお粗末さ。この信じられない状況が、犠牲者の数を増やしていく。
それでもなお、政治家は目先の利益しか考えていない・・・。
もしこのようなことが実際に起こったら、日本政府は国民をちゃんと守って
くれるのだろうか?この作品に描かれている、危機管理体制の甘さから最悪の
状況へと追い込まれていく日本の姿・・・。それが、明日にも現実のものと
なるかもしれないという不安が、どうしても拭えない。とても恐怖を感じる
作品だった。
ところでゲリラは何しに来たの?
★★★★☆
原子力発電所が並ぶ敦賀半島沖に北朝鮮の潜水艦が漂着。情報が錯綜する中、ついに民間人が殺害され、
SATがRPGランチャーの餌食に!?戦争フィクション小説の金字塔です。
責任転嫁に右往左往する政府と、法律遵守の名の下に殺害される自衛官達。そしてダダ漏れの情報。
ハードカバーは1998年出版で、ストーリーの設定も当時のものすが、現在の状況と基本的に変わらないよう
に思える。むしろ悪化してる?軍事モノに抵抗がある人でも読んで欲しいです。
ただ私の読み飛ばしかもしれませんが、最後の最後まで敵の目的が不明なのがちょっと・・・・?
ここが減点でした。
是非読むべき一書(上下巻を読んで)
★★★★☆
本書は2001年当時の日本において、有事が発生した場合に起こるであろう
状況をリアルに示した。。そこには想定外の事態に全く対応できない政治
・警察・自衛隊の姿が克明に描かれていた。その事実を知らなかった自分に
驚愕し、恐怖した。その後、現在に至るまで関連法制は整備され、状況は
変わっているらしい。だが、当時と今では何が変わって何が問題として残さ
れているのか、いまも知らない自分に更に慄然とした。
この問題は、単に当時法整備がなされていなかったということではなく、
何事も曖昧なままその時々のコンセンサス=解釈で物事に当たる国民性と、
武力問題を議論することへのアレルギー反応が根本的な問題であることを
示唆している。また、後半で描かれる、不信と恐怖がもたらす過剰な軍事力
投入の連鎖を見るとき、極限での判断を可能な限り排除する厳格な対応マニュ
アルの必要性とシビリアンコントロールの重要性は言を待たない。
戦争放棄の精神と、国民の生命と財産を守るということ。警備・防衛とは何
なのか。こうした点について、我々は単にタブー視して眼を背けるのではなく、
十分に議論する必要があるのではないか。そんな視点に立たせてくれる一書
であった。