Blink: The Power of Thinking Without Thinking
価格: ¥1,316
『Blink』は、第一印象の最初の2秒間――瞬間的な理解を得るための決定的な一瞥――の重要性を説く本だ。ベストセラー『The Tipping Point』(邦題『ティッピング・ポイント――いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』)の著者グラッドウェルは、本書『Blink』のなかで、研究成果を見事な物語に変換する才能を駆使し、直感的な判断と読心術の素晴しさを力説している。結婚、心臓発作のトリアージ、速攻のデート、ゴルフコースでの呼吸困難、車販売、軍隊の機動作戦などを例に論拠を固めながら、小さなことをよく考え、薄切りにした行動の意味に意識を集中せよと読者を説き伏せていく。大切なのは、適応力のある無意識――年中無休の精神の従者――に頼ること。その無意識こそが、危険を警告し、他人の心を読み、新しいアイディアに反応するための直感的で高度な情報を提供してくれるのだ。
同時に、グラッドウェルは結論にとびつくなという警告も発している。販売員が我々の第一印象を操作することもあるし、強い興奮を覚える瞬間が心の目をくらませ、誤った手がかりに集中したすえに、ウォーレン・ハーディング効果(すなわち、ハンサムだが無力な大統領に投票してしまう行為)に対して無防備になってしまうこともある。直感のダークサイドを暴く刺激的な章では、ブロンクスで起きた白人警官によるアフリカ系移民アマドゥ・ディアロの悲劇的な射殺事件を取り上げ、安易な認知という過ちに光をあてている。さらに、自閉症や、顔の表情を読む方法、心臓機能の上昇に関する研究成果を示し、いちかばちかの判断の質を高めるトレーニングを薦めている。刺激的ですばらしい本書にこれ以上望むものといえば、「Blink Camp」(ひらめき合宿)とはどんなものかというグラッドウェルの見解を、もう少し厚切りに見せてほしかったということくらいだ。(Amazon.com バーバラ・マッコフ)