最新の関連性理論へ
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本書は関連性理論の創始者の一人であるD. ウィルスンとその弟子T. ウォートンによるロンドン大学での講義をまとめたものです。大学の内部用教科書ということで一般に出版されていないので、この訳本は日本人にとってとても助かる一冊です。この点を考慮して星5つにしました。
内容は語用論の基礎から最近の関連性理論までをわかりやすくまとめたものです。意味とは何かから始まり、語用論の本質と目的、そしてグライスの語用論とつながっていきます。関連性理論は「人間はなぜ他人のことばの意味を理解できるのか」という問題を明らかにしようとするもので、その始まりは原書のRelevance: Communication and Cognitionからです。しかしこの関連性理論は慣れないと理解しにくい点があり、本書を言語学や語用論の知識が全くない人が読むと消化不良になるかもしれません。したがって十分吸収したい方は「語用論への招待」を読んでおくこと、または併せて読むことをお勧めします。
語用論にはまだまだわからないこと多くがありますが、本書を読むと関連性理論には色々な問題を解明してくれる可能性があると感じられるでしょう。最近の関連性理論について認知効果が得られる一冊です。