フランスの栄光を具現化した宮殿。
★★★★☆
歴史の教科書にも載っているヴェルサイユ宮殿の全景を描いたパテルとマルタンらによる二枚の絵画以外にも、表紙の写真を除き、様々な視点から見たヴェルサイユの絵や設計図などの豊富な図版が本書を飾っている点が何より魅力的に思えました。拡張、発展し続ける宮殿本体や、庭園、離宮といった部分だけに焦点が当てられるだけでなく、ルイ14世を筆頭に、芸術家、ヴェルサイユで繰り広げられる宮廷生活や祭典が、三位一体となって壮大な空間を作り上げてゆく様を詳細に解説している点も興味深いものがありました。また、現代では、ヴェルサイユ宮殿が美術館や観光名所としての役割の他にも、憲法改正などの際の議場にも提供されるなど、本書を通じてヴェルサイユ宮殿の奥深さを感じ入りました。巻末の文献資料が少ないのが唯一の気がかりでした。