これだけ広いと、駆け足で見て回るにも……。100年前も同じです。
★★★☆☆
フィリップ二世の城塞からナポレオン三世の大改築、現代の大ルーヴル計画の実施まで、「中身」の美術品よりも「箱」としてのルーヴル自体の変遷に焦点をあてた点が本書の大きな特長です。フランスの歴代君主の住居から、革命を経て一般公開を目的とした美術館誕生までの歴史を、豊富な図版で解説しているので分かりやすく、その時々の権力者の意向や政治状況に翻弄されるルーヴルの歴史は興味深いものがあり、美術品を収蔵する「箱」にも、建築上の美観とあわせて「美」を生み出す源泉が感じられる内容でした。また巻末の資料編で紹介されたシャルル・ガルブランの『内輪のルーヴル』(1894年)の記述で、一時間かそこらでこの巨大美術館を見学しなくてはならない団体客への皮肉は、現代にも通じるものがあって特に面白く思われました。