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Going Solo

価格: ¥661
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Puffin
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   原題は『Going Solo』。戦闘機での「単独飛行」というだけじゃなくて、ロアルド・ダール自身の個人主義的な生き方も表している、好いタイトルだ。

   本書は、著者自身による自伝『少年』のつづき。シェル・カンパニーに無事就職して、アフリカ勤務になってからの思い出と、第2次大戦でイギリス空軍として、枢軸国と戦った出来事を中心に、2部構成で展開していく。

   前半の「アフリカ赴任」編は、著者みずから精選したエピソードというだけあって、おもしろおかしく、時にスリリングな話の連続だ。船の上では、早朝にデッキの上を、全裸で散歩する夫婦。フケの悩みを盛んに周囲に漏らしていた男のとんでもない秘密。赴任地では、毒ヘビやライオンの襲撃に四六時中油断がならない。

   後半は一転して戦火の中。空軍に入隊してからは、ギリシャ戦線、パレスチナ・シリアへと出撃、ドイツ軍機と何十回となく空中戦をやってのける。その傍らで、パイロット仲間たちは次々死んでいく。そんな過酷な状況を、40年の歳月を隔てて、まるで水彩画のように淡々と、ダールは描く。

   驚くのは、自分を取り巻く状況を「狂っている」と認識しつつも、自ら選択して、そこに赴いていることである。そして、その大状況に飲み込まれずに正気であろうとする姿勢である。そんな彼のスタイルに触れたとき、読み手はふと、本書の原題が脳裏をよぎるに違いない。勁(つよ)い人なのだ。

   解説は、ダールと同様、児童文学と飛行機に精通しているアニメーション作家・宮崎駿。これもうれしい。永井淳訳。(文月 達)