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地獄篇三部作 (光文社文庫)

価格: ¥720
カテゴリ: 文庫
ブランド: 光文社
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大西巨人のただならぬ未発表小説集 ★★★★★
■大西巨人の未発表小説が単行本化された。「第一部笑熱地獄」では敗戦直後の日本文壇の状況がシニカルに、パロディを交えて描かれる。「第二部無限地獄」は地方都市に住む29歳のインテリ編集者と17歳の少女との恋愛を描き、男の罪ある過去の恋愛を回顧する。「第三部驚喚地獄」は「第二部」の小説を架空の文芸誌が紹介するという内容。いずれにせよ一筋縄ではいかないただならぬ作品集。



謹厳な笑い、いややっぱり神聖喜劇 ★★★★★
自己韜晦なのか、異様に厳密な文章上の各要素(単語、熟語、概念語、名詞等)、文脈への規定性なのか、将又、著者一流のヒューモアなのか、大西巨人の文体は全く独自孤高である。このこれまで未発表だったという作品でも、それは同様である。
三篇中、真ん中の『白日の序曲』は大西巨人の『悪霊』(ドストエフスキー)とも言うべき、緊密さ、奇怪さ、息苦しさのようなものを感得させる。ストーリーの素材はまさにスタヴローギンであるが、文体がそのように思わせもする。意識の流れというような方法性よりも、『罪と罰』のスヴィドリガイロフの自殺へ至る描写を想起した。あれほどの自在性よりはやや人工的なものを感じはするが、その緊密さはやはり大したものだ。しかも、本作でもあらためて思うのは、大西巨人は「喜劇」の作家であるということだ。
喜劇のスタイル、それが大西巨人の文体なのかもしれない。散文精神の一つの極北であろう。