卑小なるかな、いじらしきかな。
★★★★★
漢字一文字をタイトルとする短編集である本書は、そのタイトルがテーマそのものとなっており明快この上ない。わかりやすい、そして自分の心に馴染みやすいがゆえ、哀しくもあった。長崎市役所の原爆関連の部署で働く作者らしい視点、そして忘れ目を背けたい一方で、決して風化させまいとする努力が伝わってきた。人間はいつの時代でも人間であるしかないのだなと改めて思う。
しかし、なぜ日本における「きりしたん信仰」というある種特異な中心地に、世界で二つしか投下されていない(今のところ)原子爆弾は炸裂したのか。祈りと怒りが静かに渦巻く土地、長崎。何か悲しい運命を感じてしまう。