日本語を誇れるようになります
★★★★☆
日本語と欧米の言語の違いと
今まで一般に日本語の欠点と言われている部分について
誤解を解くための解説がなされています。
単純に読み物として面白いです。
秀逸、かつ、知的好奇心を満たす本
★★★★★
著者の言語を通してみた文化的側面に光を当てた本書は、読むものを最後まで飽きさせません。本書では、普段私たちがあまり意識することのなかった日本語という言葉を、他の多くの言語と相対的に比較し、日々の生活の中で、少なくとも一度は見聞きしたことのなる身近な事例を多く取り上げ、多くの日本人が勘違いしてしまっていることを、ズバズバとしてきしてくれているのは、まさに快感の一言です。
ありがちな多くの言語学の本のように、単に日本語と英語を比較するのではなく、他のさまざまな言語を提示し、素人でも分かりやすいように分類して丁寧に解説されています。また、日本人の外国語学習にも触れ、日本人が外国語を習得する点におけるこれまでの歴史的な背景についても、かなり時代を遡った上での考察があったり、ある単語が外国語に置いては全く異なる二つの対象物について、著者の執念ともいえる追跡結果を披露するなど、学者の中でも極めて純粋にその分野を追及されている姿勢に感銘を受けました。
著者の半世紀に渡る研究成果の集大成
★★★★★
著者は日本でも非常に著名な言語社会学者であり、著書も多数あり、
ご自身も数か国語を流暢に使いこなされる方である。
本書は「新潮45」に連載したものを基に一冊の本にしたものであるが、
著者ご自身もあとがきで述べているように、半世紀に渡る研究の成果を
新書レベルに合わせて読者に興味深く読めるよう配慮して書き上げた
ものになっている。いわば、著者の半世紀の研究成果の集大成といっても
過言ではない。
著者の他の著書を読んだことがあれば、内容は関連しているので読みやすい。
日本語の言語学的な特性、歴史的、地理的観点から見えてくる特性、
色や単語としての括り方から見えてくる言語の文化的な差異、親族表現に
見られる日本語の特性等分かりやすく紹介している。
そしてこの本で最も強い主張は、日本を世界の観点から客観的に眺めれば、
今後は、日本語でもって世界に発信していく言語観の変換が必要である、
ということである。それがタイトルに表れている。
ことばは、武器を持たない日本にとって、国を護り主張するための武器である
という主張と共に、著者の30年以上前の著作からブレずにずっと継続して
訴え続けるこれらの主張は、年と共に重みを感じずにはいられない。
日本語の優秀さを明快に教えてくれます
★★★★★
日本を代表する言語学者の新著。すぐ買って、すぐ読んだ。日本人は歴史的に見て、欧米崇拝の意識からまだまだ抜けきらず、日本人であることも、日本語そのものも卑下する傾向が強い。外国人の生徒に日本語を教えた経験のある私にとって、もっと自信を持って、日本語を教えればよかったと教えてくれる。たとえば、外国人の子供は、あるいは大人でも、漢字は難しいとすぐ言い、勉強を放棄してしまいがちになる。漢字こそ、すぐれた日本語の特徴であるということを知ってもらう努力をもっとするべきであったと思い直している。
また、第四章の「日本語に人称代名詞は存在しない」の1 身内の呼び方の方程式 を読むと、長年疑問に思っていたことがすっきりして、それぞれの言語を話すそれぞれの国の文化や、国民の考え方がわかっていろいろと学ぶことができる良書である。
亡くなられた大野晋氏との対談集など何冊かの前著も含めて、この本は言葉に関心のあるすべての人へお勧めの一冊です。
虹の七色を英語で言う場合は、Richard of York goes battling in vain.が一般的
★★★★☆
私は学生時代から四半世紀間、この著者の社会言語学の本を愛読してきました。
本書「日本語教のすすめ」は平成19年から3年間「新潮45」に連載した文章を加筆修正したものとのこと。著者の著作に縁のない読者も多い雑誌での連載ですから、書かれていることはこれまで著者が主張してきたことの反復であり、私には目新しいものはないものの、外国語と日本語の違いについてなんとなく興味を持ち始めた中学生以上の読者には十分楽しめる一冊だと思います。
著者がまず具体例と共に提示するのは、外国語を学ぶと「この世界にはなんと色々な変わったことを思ったり考えたりする人がいるものかという、人間のものの見方の多様性についての理解が深まる」楽しさです。
日本人は虹が七色だと“知っている”が、ドイツでは五色だと思っている人が多いこと。
太陽を赤く塗るのは日本では常識だが、英語圏では黄色であるのが当たり前であること。
こんな日本語と外国語との通念の差について明快かつ興味深く著者は筆を進めています。
しかしこうした彼我の違いの面白さから説き起こして著者が最終的に強く主張するのは、日本固有の、そして諸外国に対して普遍的に説くべき価値観を日本人が日本語で積極的に発信していくことの重要性です。
著者いわく、日本語に対して不必要な劣等感をもつ日本人は多いのだとか。
しかし日本語は1億以上もの話者を持つ、世界的にも巨大な言語です。
英語をはじめてとして欧州言語に過剰な劣等感を持つのではなく、この日本語を使って発信していくことができるはず。そう著者は説きます。
本書によって目を洗われる読者は間違いなく多いと思います。