イタリアのシャーロキゥアンが（ワトソン博士の遺した手記を、遺族から入手した、という体で）書いたパスティーシュです。
キャラクターの性格がよく書けているし、各種の設定もよく生かされていて、ドイルの作品を読んだことがある方にはとても楽しめると思います。
また、大掛かりな仕掛けのある話や、同時代の著名人を登場させる話、短い短編の中で二転、三転させるものもあって、単なるパスティーシュの枠を超えて「現代の娯楽作品」に仕上げようという著者の意欲を感じさせます。
一方で、情景の描写がやや硬いというか、くどいと感じるくらい詳細な箇所があって、むしろ幻想を誘うような原典の描写が好みだという向きには違和感があるかもしれません。

現代化の取り組みや、描写の風情の違いを嫌う熱心なシャーロッキアンの方もいるかもしれません。
ですが、肩肘張らずに楽しんだほうが楽しいと思います。

今読んでいますが 短編集なので、きりがいいし読みやすい。他の作品も読みたくなりました

　既刊五冊に及ぶ著作の中から七編のみを選んで構成したものであり、訳文もよくて面白く、続訳続刊を大いに期待したい本である。