買いです
★★★★★
長く翻訳されてこなかった作品なので、デビュー作は大したことなかったのかな、新作がなかなか出ないから今頃訳してきたのかな、と思っていたけれど、これがどっこい、迫力のある小説でした。
ガリバルディ以降のイタリアの話、というととても遠い物語のようだけど、それがある家族を軸に語られるといきいきとしてくる。エピローグからはじまり、登場人物の相関関係がちょっと複雑だけど、タブッキ好きならすぐにぐいぐい引き込まれていくこと請け合いです。
主客が入れ替わるとか、幼なじみが故郷に帰ってきたと思ったらファシストの活動にのめり込んでいったりするというイタリア史のうす暗さの描写は、ベルトルッチの映画(「1900年」あたり)にも似て映像的。占い師と、占いを信じるがあまり悲劇を呼び込んでしまうという構造もドラマチックで(オペラみたい)、物語にいっそうの(怪しい)彩りを与えている。
買いです。