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龍馬 (一)―青雲篇 (文芸シリーズ)

価格: ¥1,680
カテゴリ: 単行本
ブランド: 角川書店
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   坂本龍馬といえば、幕末維新期の永遠のヒーローとして不動の地位にあり、その生涯を描いた司馬遼太郎の『竜馬がゆく』もまた、国民小説といっていいほどの評価を得ている。

   だが、そんな司馬「龍馬」の存在ゆえか、後続する「龍馬小説」がなべて小粒に見られがちなのも事実である。この壁に、歴史小説家としてすでに第一人者である津本陽が挑んだ。それが本書から始まる全5巻のこのシリーズなのだ。

   第1巻・青雲編では、いまだ何者でもない若き龍馬が、江戸への武者修行、黒船襲来などの未知の体験や、多くの人との交流を通じて、自分のなすべきことを探し続ける姿が描かれている。確かに彼は剣術に秀いでており、時代の空気の流れに敏感な若者ではあるものの、そのキャンバスは無地のままなのだ。

   加えてこの巻では、恋人お琴との、慎み深くも一途なラブストーリーが横軸に展開されている。さらには、いつも龍馬の傍らにいて、彼を見守り励ます姉乙女。幕末という、ともすれば男臭さだけがにおい立ってくる時代に、優しく涼やかな風が吹いている。作中、海のシーンが多いのも、物語の風通しをよくしている。海は、龍馬にとって、土佐や身分という狭い世界・関係を越えることのできる唯一自由の象徴なのである。

   困ったのは、読み終わったあと、龍馬たちが使う土佐弁が頭から離れないことだ。津本の憎いテクニックが効いている。(文月 達)