全音の楽譜の中ではおすすめです。
★★★★☆
全音出版部の校訂した楽譜は編集時期が古かったり内容に誤りがあることが多く、基本的におすすめしないのですが、この本は幸運な例外です。
ベートーヴェンのソナタは原典版で弾くのがよい。理想的にはその通りなのですが、現実問題として専門家や音大生以外が原典版で弾こうとすると大変な苦労をします。その原因の一つが、運指です。ベートーヴェンのピアノソナタ原典版として権威のあるヘンレ版は、10度が届く手を前提に運指が書かれています。これでは手の小さな日本人には弾けません。全音のこの楽譜は原典版の欠点をよく補完してあり、手の小さい人にも弾きやすい運指になっています。
ベートーヴェンの中~後期の名ソナタが一冊で揃っています。文句なく格好良い「ワルトシュタイン」や「熱情」、第九交響曲に匹敵する巨大なソナタ「ハンマークラヴィーア」、至高のピアノ音楽といえる30/31/32番。分厚いページ数に、歯ごたえのある曲が並んでいます。この楽譜でぜひベートーヴェンに挑戦してみてください。そして、もっと深く追求したくなったら、原典版の楽譜も見てください。