イタリア・トスカーナ地方出身、盲目のテノール歌手アンドレア・ボチェッリのインターナショナル・デビュー・アルバム。欧米のほとんどの国でNo.1を獲得し、全世界で3000万枚以上を売り上げた代表作。サラ・ブライトマンとのデュエットで大ブレイクした「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」のイタリア語ソロヴァージョン原曲「君と旅立とう」、そして当のサラとの英語版デュエット「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」を収録している。他にジェラルディーナ・トロヴァート、ジョルジア、ジョン・マイルズがゲスト参加して彩りを添えている。
   ボチェッリは、クラシックのテノール歌手という狭いカテゴリーを越えている。特に、甘くざらつくようなセクシーな低音、鼻にかかったような独特の中音は、むしろポップな音楽において大きく開花する資質である。それに加えて、不世出のテノールであった師フランコ・コレルリ直伝の伸びのある高音で歌い上げる瞬間が、聴き手の心をつかんで離さない。すべての曲において保たれている高いテンションのなかで、この中での唯一のボチェッリの自作曲「このままで」の独白が印象的。また、全編にわたって聴ける美しく自然でダイナミックな抑揚のあるイタリア語を聴けるという楽しさもある。（林田直樹）