夢の香り
価格: ¥2,621
ボチェッリが、ポップスを歌うテノール歌手というよりは、抒情的なヨーロピアン・ポップス歌手としての方向性をいよいよ鮮明に打ち出したアルバム。美しく感動的なメロディラインを切々と大きなスケールで歌い上げ、ひとつの曲にドラマを織り込むボチェッリのスタイルに磨きがかかっている。朗々と張り上げるパワーはもちろんのこと、肩の力を抜いたポップな仕上がりの曲も多くなり、ゆったりと心地よいアルバムとなっている。
セリーヌ・ディオンとデュエットし、デイヴィッド・フォスターがプロデュースした「祈り」、そしてシャープな歌声が素晴らしいイタリアの国民的人気歌手エロス・ラマゾッティとのデュエット曲「心の中の彼女」は、どちらもおもしろい変化をアルバムに与えている。ボチェッリのストレートで誠実な歌は、個性的な歌手とのデュエットにおいても、相手に対する暖かい包容力を発揮するようだ。
解説にはなくクレジットもほとんど目立たないため、うっかりすると見落としてしまうが、「ある歌」「君は河のように」の2曲はエンリオ・モリコーネの作曲。メロディラインは常套(じょうとう)的に陥らず非凡であり、興味深い聴きものとなっている。(林田直樹)