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Echoes: The Best of Pink Floyd

価格: ¥3,120
カテゴリ: CD
ブランド: Capitol
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   本作は、ピンク・フロイドの2枚組ベスト盤だが、バンドの歴史をたどる興味深いドキュメントにもなっている。ピンク・フロイドは、まずシド・バレット率いる、幻覚剤で味つけしたおとぎの世界――妖精、かかし、猫、自転車などが登場――の詩人たちとして世に出た。その後、壮大なスペース・ロック・オデッセイと言うべき作品でイカロスの翼をつけて太陽へと飛び立つ。月の裏側(The Dark Side Of The Moon)にたどり着き、大気圏再突入で炎に包まれ、地上の人々の家庭用ハイファイ・オーディオ装置のもとに不時着すると、高飛車だが熱く煮えたぎるような負の感情をまとった彼らの(と言うよりロジャー・ウォーターズの)華麗なロックは、しだいに左翼的な方向に傾いていく。こうして、社会問題(アルバム『Animals』)、全体主義(『The Wall』)、世界大戦(『The Final Cut』)が題材となったのだ。

   そして今、すべてがここにある――フロイドの30年を2枚の立派なCDに凝縮した、素晴らしい回顧カタログとなって。今一度言っておきたいのだが、花火のようなけばけばしい趣味(うまいことに――たぶん意図的にそうしたのだろうが――このアルバムは花火が上がる11月5日の祝日にリリースされた)にもかかわらず、ピンク・フロイドは決してプログレ・バンドではなかった。確かに少々長い曲もあるし、シングルを(少なくとも11年間)一度もリリースしなかったが、同じことはレッド・ツェッペリンにだって言えるのだ。あの時代にありがちなクラシック音楽もどきの序曲や、うぬぼれの強い音楽性から冷静に距離を置いたところにピンク・フロイドは立っていた。

   アルバム『Meddle』からの、海をテーマにした壮大な音詩「Echoes」は、今もってフロイドの最高傑作だ。しかし、このコレクションの中では、「空で静止するアホウドリ」は翼を切られている――7分間がごっそりカットされているのだ。だが、オリジナル・ヴァージョンとの違いは絶対に分からないだろう。ソナーの音、カモメの鳴き声、風の吹きすさぶ音はすべてそのまま。ハサミを入れた編集者が誰なのか知らないが、実に念入りな仕事ぶりと言えそうだ。

   興味深いことに、トラックは年代記的に並べられてはおらず、子どものころの喜びを歌った、夏を思わせるような「See Emily Play」が、学校教育を手厳しく非難した「Happiest Days Of Our Lives」の次に置かれているといった具合なのだが、こういった構成のお陰で、少なくともアルバム『A Momentary Lapse of Reason』からの曲が聴こえてきたときに聴き手の興がそがれるようなことはない。どういうわけか「Atom Heart Mother」が選曲からもれているが、本作は間違いなくフロイドのヴェリー・ベストだ。脈打つような「One Of These Days」(DJのジミー・ヤングを刺激した曲)から、ポップ・オペラ的な「Great Gig In The Sky」、デイヴ・ギルモアのなめらかで冴えた天才的ギター・ワークまでを網羅。これは時代を超越した音楽だ。シガー・ロス、レディオヘッド、ブラー、ベータ・バンドといったグループのメンバーたちだって、口をそろえてそう証言するに違いない。(Kevin Maidment, Amazon.co.uk)